2018年12月14日に財務省から閣議決定を受け2019年度の税制改正の大綱が公表されました。その中に仮想通貨取引に係る税制の取扱いも含まれているためAerial Partners(エアリアル・パートナーズ)が解説します。
(2019年5月24日追記)税制大綱の内容を受けて法人税法が改正され、2019年(平成31年)4月1日から施行されました。詳しい改正内容はこちらの記事をご覧ください。
仮想通貨の税制
税制改正大綱とは、翌年以降の税制のあり方を与党がまとめた方針のことです。これに従い、通常国会にて税制改正法案が提出されます。
2019年度税制改正大綱において仮想通貨の取扱いが公表されました。個人に対する所得税の取扱いは国税庁からのタックスアンサーやFAQで公表されていましたが、結論から言いますと、取扱いに変更はなく、所得税法として法令化され、法人税の取扱いについて法人税法で明確化されるかたちとなります。
法人における仮想通貨の法人税
(2019年5月28日追記)税制大綱の内容を受けて法人税法が改正され、2019年(平成31年)4月に施行されました。具体的な改正内容はこちらの記事にて説明しておりますのであわせてお読みください。
この度の税制改正大綱で一番のトピックとなるものは、仮想通貨を保有する法人の期末時の評価方法が明確化されたことです。
これまでは法人が期末日に保有する仮想通貨の評価方法について取扱いが明確化されていませんでした。そのため、期末において保有する仮想通貨を時価評価するのか、原価で評価するのかが論点となっていました。
この度の税制改正大綱において、期末に保有する仮想通貨は活発な市場が存在する場合には時価において評価することが公表されました。これにより、期末時の時価が取得原価を上回っている場合には評価益が、下回っている場合には評価損が計上され所得を構成することとなります。法人に限った話であり、個人における話ではない点ご注意ください。
仮想通貨の税制改正サマリー
最後に所得税も含めた税制改正大綱の内容を端的に記載します。
1. 仮想通貨に関する所得税の取得価額の計算方法の明確化
現状は国税庁からのタックスアンサーやFAQ形式で税務上の取扱いが公表されているに過ぎませんでしたが、この度の税制改正において法人税法の改正として国会成立後、法令化されることとなります。なお、明確化された内容は以下の通りであり、タックスアンサーやFAQで公表されていた内容と相違する点はありません。
- 所得区分は原則として、雑所得である
- 取得価額の計算方法については、移動平均法又は総平均法とする
2. 仮想通貨に関する法人税の課税関係
企業会計基準委員会(ASBJ)により実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」が公表され、会計上の取扱いが定まったことを機に、法人税法上の取扱いについても、この度の税制改正において取り扱いが明確化されています。明確化された内容は以下の通りです。なお、適用開始時期は2019年4月1日以後に終了する事業年度からの適用となりますのでご留意ください。(平成31年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度については、会計上、期末に保有する仮想通貨につき時価評価していない場合には、時価評価による評価損益の計上及び信用取引等についてのみなし損益の計上は行わないことができる経過措置が設けられています。)
- 法人が期末に保有する仮想通貨の評価方法
活発な市場が存在しない仮想通貨:原価法
- 仮想通貨の一単位当たり譲渡原価の算出方法について、移動平均法又は総平均法とする
- 仮想通貨の譲渡損益については、その譲渡に係る契約をした日に計上する
- 仮想通貨の信用取引等について、期末に決済されていないものがある場合は、みなし決済損益額を計上することとする
税制大綱の要点
今回の税制改正大綱においては、個人の仮想通貨に関わる税金の取り扱いについて変更や追加の情報はありませんでした。一方で、法人として仮想通貨を扱う場合の取り扱いについては期末日に保有する仮想通貨の評価方法が明確化されたことにより、今まで論点となってきた税務上の処理方針が固まりました。今後法人においても仮想通貨を扱う企業が増加していくことが想定される中で、この度の税制改正大綱は適切な課税関係を整備する上で大きく前進したと考えられます。
なお、今回明確化された、期末時に保有している仮想通貨を時価評価するのは法人のみですので、個人については含み益への課税はないことにご留意ください。