2019年12月12日、与党である自由民主党・公明党から「令和2年税制改正大綱」が公表されました。JVCEA、JCBA等の業界団体が税制改正要望書として要望していた事項は、来年度の税制改正の内容には盛り込まれませんでした。
税制改正大綱に含まれている暗号資産(仮想通貨)に関する主要な事項を解説していきます。
暗号資産デリバティブ取引は、株式やFX取引に認められる次の制度の対象外と明確化
- 申告分離課税(税率20%)
- 損益通算
- 3年間の繰越控除
仮想通貨(暗号資産)の税制改正
税制改正大綱とは、翌年以降の税制のあり方を与党がまとめた方針のことです。毎年末に公表され、これに従い通常国会にて税制改正法案が提出されます。
2020年度税制改正大綱において暗号資産デリバティブ取引の取扱いが公表されました。税制改正要望としてJVCEA、JCBAといった業界団体が要望していた事項は認められず、従来の取扱いと変更はありませんでした。
また、現物取引における個人への所得税の取扱いと法人税の取扱いは、すでに今年の税制改正で変更されているため変更はありませんでした。
申告分離課税とはならず
JVCEAは、暗号資産(仮想通貨)のデリバティブ取引・現物取引にも申告分離課税を適用し、税率は20%(所得税15%、住民税5%)とすることを要望していましたが認めらず、申告分離課税の適用外とすることが明確化されました。
申告分離課税は、他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納める制度です。金商法下で規制されている株式等の取引や外国為替証拠金取引(FX取引)について適用され、税率は20%となっています。
金商法改正により、暗号資産(仮想通貨)は金融商品の1つとして認められ、暗号資産(仮想通貨)関連デリバティブ取引は金商法上のデリバティブ取引として位置づけられたことを受け、暗号資産(仮想通貨)のデリバティブ取引・現物取引にも申告分離課税を適用できるかが論点になっていました。
これらはJVCEA、JCBAが税制改正要望書として要望していた事項でしたが、来年度の税制改正の内容には盛り込まれなかったかたちです。
損益通算、繰越控除は認められず
JVCEAは、申告分離課税とした上で、損失が出た場合に他の所得と相殺できる「損益通算」や、損失を3年間繰り越せる「繰越控除」を認めるよう要望していましたが、これも認められませんでした。
現状、暗号資産(仮想通貨)取引による利益は現物デリバティブ取引ともに雑所得扱いとなるために、損益通算・繰越控除ともに認められていません。一方、 金融商品デリバティブ取引では、損益通算、3年間の繰越控除が制度として認められています。
これらが認められれば、暗号資産(仮想通貨)取引で発生した損失を他の所得と相殺したり、損失を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できることになり、税金対策の選択肢が大きく広がることになり、ユーザーにとって、税務上大きなメリットをもたらす内容です。今回の税制改正大綱により、少なくとも来年の税制改正の内容からは外れることが明確になりました。
税制大綱の要点と今後の流れ
今回の改正では、暗号資産デリバティブ取引は申告分離課税や損益通算、繰越控除の適用対象外とされ、業界からの要望が認められないかたちとなりました。改正法が国会で可決されるまでは税制改正大綱の内容が確定するわけではありませんが、事実上改正は難しい状況と言えるでしょう。
今後の流れとして、税制改正の内容について1月の閣議決定を通し、法律案として国会に提出されることになります。その後国会で可決されれば、改正法案が4月に施行されます。
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株式会社Aerial partners 事業部長 / 公認会計士・税理士
監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。