仮想通貨(暗号資産)は国や地域に関係なくいつでも送金することができます。
さらに銀行などに比べ比較的安い手数料で送金できます。
そんな便利な仮想通貨ですが、送金をする際には税金がかかるのでしょうか?今回は仮想通貨の送金に関する税金について様々なケースを例に解説していきます。
※この記事は、2019年9月17日時点の法令に基づき、仮想通貨(暗号資産)に関する税制についての一般的な説明を目的として作成されています。
目次
仮想通貨(暗号資産)にかかる税金
まずは仮想通貨にかかる税金について解説していきます。
仮想通貨取引による所得は原則として雑所得に区分され、年間の雑所得の総額が20万円を超えると確定申告が必要になる可能性があります。
雑所得には以下のような特徴があります。
- 総合課税の対象で、給与所得等の他の所得と合計した金額に応じて税率が変化する。
- 所得額が大きくなるほど税率が高くなる「累進課税」の仕組みである。
- 仮想通貨取引によって生じた損失分を、給与所得など他の所得区分の所得から差し引くことはできない。
- 損失を翌年に繰り越すことはできない。
仮想通貨の税金と確定申告について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
仮想通貨(暗号資産)にかかる税金と確定申告の基本|税理士がわかりやすく解説!【2023年最新】
仮想通貨取引における所得税は、保有している仮想通貨を売却するときや、仮想通貨で他の仮想通貨を購入するときに発生する所得に対して課税されます。
では、仮想通貨を送金するときに税金は発生するのでしょうか?ここからは仮想通貨の送金に関わる税金をケース別で解説していきます。
仮想通貨(暗号資産)の送金で税金がかかるパターンは?
先述した通り、保有した仮想通貨を売却したり、他の仮想通貨と交換したりする場合は、一度「利確(利益確定)」しているとみなされて、課税の対象になります。
つまり、仮想通貨の送金においても利確したとみなされれば、税金がかかることになります。
そのため、仮想通貨送金時に税金がかかるパターンは次のようになります。
- 友人や家族など第三者に売却目的で仮想通貨を送金する場合
- 友人や家族など第三者に利息付きの貸与として仮想通貨を送金する場合
- 友人や家族など第三者に贈与として仮想通貨を送金する場合
- 送金時に別の仮想通貨へ両替される場合
- ICO・IEO・IDOなど仮想通貨の購入目的で送金する場合
特に「友人や家族など第三者に利息付きの貸与として仮想通貨を送金する場合」と「友人や家族など第三者に贈与として仮想通貨を送金する場合」は送金する側だけではなく、受け取る側にも「贈与税」が発生する可能性もあるので、どちらの立場になっても良いよう、きちんと理解しておきましょう。
それでは、それぞれのパターンについて、詳しく解説していきます。
ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)を売却するために送金する場合
友人にビットコインなどの仮想通貨を売却するために送金する場合、所得税が発生する可能性があります。
例えば、60万円で取得した1BTCをその時の時価である100万円で友人に売却した場合、40万円の利益となり、所得税が発生します。
これは日本円と仮想通貨での取引だけでなく、仮想通貨同士の交換においても取引によって利益が出ている場合には所得税が発生します。
仮想通貨(暗号資産)を友人や家族にあげるために送金する場合
保有している仮想通貨を友人や家族に贈与する(無償であげる)ために送金した場合、所得が発生する可能性があります。
仮想通貨を時価より著しく低い価格で売却(もしくは無償で贈与)する場合*1、このような取引は、実質的な贈与と見なされ、贈与者(送った人)に課税の対象となる所得が発生する可能性があります。
*1:時価の70%以下相当額未満で売却(または無償譲渡)する場合
所得の計算方法については国税庁の資料をご確認ください。
国税庁:贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁:暗号資産に係る税務上の取り扱い
また、贈与の金額が110万円を超えている場合、受贈者(受け取った人)に対して贈与税が課税される可能性があります。
利子付きの貸付として仮想通貨(暗号資産)を送金する場合
贈与や売却ではなく貸与目的で第三者へ送金する場合は、利確としてみなされないために税金はかかりませんが、受け取った利子が所得となり、課税の対象になります。
レンディング報酬に税金がかかるのと同じで、サービスではなく個人間の送金でも、利子の取り決めがあって仮想通貨などを受け取るのであれば、それが利益とみなされます。
無利子で報酬を得ないのであれば、送金した貸す側には税金はかかりません。
しかし、借りた側は利息分の利益を得たとされ、金額次第で「贈与税」の対象になる場合があります。
送金時に別の仮想通貨へ両替される場合
送金と同時にビットコインからリップルなどへ両替が行われる場合は、そのタイミングで仮想通貨同士の交換が行われたとみなし、税金がかかる送金になります。
これも「一度売却して利確したもので、別の通貨を購入した」ものになるので、送金であっても見逃さないようにしましょう。
ICO・IEO・IDOの参加時に送金する場合
ICOでは、参加時にビットコインやイーサリアムなどの指定された仮想通貨を自分のウォレットから指定のアドレスへ送金すると、トークンを受け取ることができます。
送金する際に仮想通貨の時価が取得したときよりも値上がりしている場合、所得が発生し、所得税が課税される可能性*があります。
取引所が主体となった「IEO」や、DEX(分散型取引所)で行われる「IEO」も同様で、送金によって他のトークンを得られるものは仮想通貨取引とみなされます。
*ICOに関する仮想通貨の税務上の取り扱いは明確に定まっておらず、国税庁もいまだ見解を示していません。
どのタイミングで送金した通貨に対して損益を認識するか等取引内容によっても処理が変わってくるためICOに関する税金については税理士に相談することをおすすめします。
仮想通貨(暗号資産)の送金に関する税金で覚えておきたいポイント
最後に、仮想通貨(暗号資産)の送金に関する税金で、いくつかのポイントを紹介しておきます。
状況によっては送金に税金が発生しなかったり、送金で税金がかかったとしても一部経費に計上したりすることもできます。
取引所から自分のウォレットへ送金する場合は税金が発生しない
保有している仮想通貨を取引所から自分のウォレットへ送金する場合、税金は発生しません。
このケースでの送金では、自分の資産内で仮想通貨を移動しているだけなので利益の発生がないため、所得税は課税されないと考えられます。
取引所を介さない取引は取引履歴に残らないので注意
友人に1BTCを送金して100万円を直接受け取るといったような取引所を介さない取引がある場合、取引所やウォレットには、「×月×日に○○というアドレスに1BTCを送金した」という取引履歴しか残らず「100万円を受け取った」という履歴が抜けてしまいます。
損益計算ソフトなどにそのまま履歴をアップロードすると正しい損益額を計算できません。
正しい損益額を出すには手動入力などで履歴を追加する必要があります。
取引所を介さない取引をする際は、必ず取引の内容を自分で記録しておきましょう。
(エクセルでの取引のメモ例)
送金手数料は経費になる可能性がある
仮想通貨を送金する際にかかる送金手数料は必要経費として総所得金額から差し引ける可能性があります。
送金手数料を差し引くことで課税所得金額が低く抑えることができます。
まとめ
自分の資産をただ移動しているという仮想通貨の送金であれば、税金はかかりません。
しかし、その送金目的が売却であったり贈与であったりと、送金する側・される側のそれぞれで利益が生まれる場合は、それが所得とみなされて課税対象になります。
また、ICOやIEOなど通常の売買ではなくとも、送金が売買と同様のものとみなされる場合も税金がかかることがあります。
取引だけではなく、確定申告時には送金した内容が課税対象に当たらないか、注意するようにしましょう。
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株式会社Aerial partners 事業部長 / 公認会計士・税理士
監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。