2018年5月にニューヨークで開催された世界最大のブロックチェーンカンファレンス『Consensus2018』に代表の沼澤が参加しました。
帰国後、日本のブロックチェーンコミュニティに最新動向を共有するため報告会を開催しましたので、その内容を紹介していきます。
目次
Consensus2018とは
Consensus2018は、世界中のブロックチェーン・仮想通貨の人たちが集まる祭典です。
主催者は世界最大のブロックチェーンメディアであるCoindesk。
ニューヨークのヒルトンホテル中心にしたイベントで、今年で4年目となり8,000人もの参加者が70ヶ国以上から集まりました。
ニューヨークの中でも一番早く成長したカンファレンスと言われています。
報告会の経緯と概要
ALIS (*1) CEO安昌宏さんの「Consensus2018僕行きますよ! 行きましょう!」の一言で触発されて即日申し込んだメンバー(*2)による報告会を行いました。代表の沼澤もそのメンバーの一人です。
5月末、ニューヨークではConsensusだけでなくたくさんのブロックチェーン関連のイベントが開催されています。ニューヨークに足を運び、海外のたくさんのプロジェクトに触れて世界中から集まった人に会うのだったら自分たちだけのものにしたらもったいない。シェアする事が大事!と言うことで、モデレーターである「ミスビットコイン」こと藤本真衣さん発案のもと、メンバーが得てきたものをシェアする会を実施しました。
会場には満員御礼で70名以上の参加者にお集まりいただきました。
報告会のメンバーからは、藤本真衣さんからドン・タプスコット氏による基調講演とMonacoプロジェクトについて紹介があったほか、『ブロックチェーンの衝撃』の監修で知られる馬渕邦美さんからはカンファレンスの概要や位置づけ、同時期にニューヨークで開催されていたイベント(*3)の紹介などがあり、安 昌浩さんからもテクノロジーの話が意外と少なかったことなどについて、それぞれ紹介があり、非常に盛り沢山な内容の報告会でした。
*1 ALISは日本発のICOプロジェクトとして知られ、「信頼の可視化で人のつながりをなめらかにする」ことを目指したブロックチェーンプロジェクトです。
*2 安昌宏さん、藤本真衣さん、馬渕邦美さん、沼澤健人の4名のメンバーです。
*3ニューヨークでのイベントの詳細は次のブログに詳しいです
http://blockchain.gunosy.io/entry/consensus2018-report
Consensus2018会場の様子
代表の沼澤からの報告
代表の沼澤からは、「ブロックチェーン業界の黒船は金融なのか」というタイトルで報告しました。以下、その要旨を報告します。
ブロックチェーン業界の現在地
沼澤:私からひとつ問題提起というか、みなさんも一緒に考えてみてくださいという内容を共有させていただきます。
今、ブロックチェーン・仮想通貨業界が投機的なマーケットだという指摘が多くあります。
一方で、どんな業界でもまず投機が先行して、内容に基づいた投資に発展して、実需が伸びていくというサイクルがあり、これはブロックチェーン業界においても例外ではありません。
2017年以前、投機の文脈でブロックチェーンの認知拡大に貢献したキラーアプリが仮想通貨トレードであったことは間違いありません。
今後、ブロックチェーン技術を利用した産業が投機から投資、そして実需へと発展する中で、
「ブロックチェーンを使った実需はどういったシナリオで生み出されていくんだろう?」という問題について考えるようになりました。このカンファレンスへの参加を通じて、ひとつの仮説を持ち帰ってきましたので、この場でみなさんにシェアさせていただきたいと思います。
あくまで、「こうしたシナリオが一つのオプションとして考えられる」という問題提起ですので、みなさんがブロックチェーン業界の近未来を予測する良いきっかけになればと思います。
ブロックチェーンの実需は誰が生み出していくのか
沼澤:カンファレンスでは、数多くのブロックチェーンプロジェクトが出展する中で、金融文脈のプロジェクトが多かったのがとても印象的でした。
こうした状況をみると、「金融業界のようなレガシー且つ、ビジネス上のエグゼキューション能力の高いプレーヤーがブロックチェーン業界の実需を作っていくのではないか」というシナリオが浮かんできます。
例としてConsensus2018に出展していた「Smart Valor」というプロジェクトを紹介します。
実際に参加したセッションの内容だけで実現可能性について判断するのは難しいのですが、金融業界の人たちがブロックチェーン技術をどのように活用していこうとしているのかという例として紹介したいと思います。
彼らような金融系のブロックチェーンプロジェクトのファウンダーの多くは、既存の金融系のビジネスを知り尽くし、実行力の高いビジネスマンです。Smart Valorチームは、コモディティや現物不動産等のオルタナティブ資産の証券化を行うためのプラットフォームを目指していて、既存の市場経済の中で機能している投資対象のトークン化(*1)を加速するプロジェクトです。これ以外にも、実物資産に裏付けられた金融商品へのブロックチェーン技術の応用が加速していく流れができつつあるのではないかと考えています。
ここで挙げたのはあくまで一例に過ぎませんが、彼らのような金融業界出身のプレイヤーが、規制を自分たちのビジネスの方向に動かしつつブロックチェーン技術の活用を実現していく流れがありえるのではないか、という問いについて考えるのは、ひとつ面白いテーマかと思います。
*ブロックチェーン上で発行した独自の電子的媒体(コインのようなもの)を「トークン」といいます。ブロックチェーン上で新たなトークンを発行することをここでは「トークン化」と呼んでいます。
過渡期の今だからこそ、ブロックチェーン業界は外に目を向けるべき
沼澤:リバタリアン思想を持ち出して語られることの多いブロックチェーン技術ですが、素敵なジャケットを着たウォール街を中心とする金融系のプロジェクトが「黒船」としてやってきて、ごそっと実需の市場を持っていくという結末を望まない方も多いのではないでしょうか。
「では、仮想通貨トレードの次のキラーアプリは何なのか?」僕自身も、このテーマについては探求していきたいと思っています。
日本ではこういった文脈でブロックチェーン業界の未来を語っている話は少なく、世界規模のカンファレンスで数多くのプロジェクトと話をしたからこそ感じられたこととして問題提起しました。
報告がおわって
報告が終わったあとは参加者との懇親会が開催されました。沼澤からは、カンファレンスを通じて外国のプレーヤーからみた日本の相対的な位置づけが変わってきているという感覚を持っていて、特に日本の規制引き締めに関してのネガティブな反応が語られることが多かったという話をしました。こうした文脈での議論が日本でも活発になって日本のブロックチェーン業界がこれ以上世界に遅れをとることのないように盛り上げていきたいと話す中で、参加者の方からも同様の危機感を持っているというご意見もいただきました。
報告会参加メンバーがカンファレンスへの参加を通じて感じることができた、世界の中での日本のブロックチェーン業界の課題について、弊社としても課題としてあらためて認識し、課題解決に向けて前向きな事業活動に取り組んでまいります。