エアリアル・パートナーズの代表取締役 沼澤健人が、仮想通貨業界のキーパーソンと業界の未来について語る対談企画第1弾。
今回のキーパーソンは、JCTA(ジャクタ/一般社団法人 日本仮想通貨税務協会)理事長の岡田佳祐氏。難解なイメージが先行する仮想通貨の確定申告や税務処理にまつわる現状など、わかりやすく解説してもらいました。
仮想通貨の確定申告を考えている投資家・税理士の方は必見です。
仮想通貨税務の課題点、それに関する活動について
−−まず、仮想通貨投資の現状について教えてください。
沼澤
−−JCTA(日本仮想通貨税務協会)の活動内容を教えてください。
岡田氏
現状の課題から考える
−−仮想通貨の税務の難しさは、どのような点にありますか?
沼澤
岡田氏
一方、従来のFXや株式とは異なり、仮想通貨投資は、一種類の通貨でも複数の取引所を利用することが一般的です。国内外で多数の取引所を利用している方もめずらしくなく、非常に計算が複雑になる。また、現税制では、通貨同士の交換でも、含み益ではなく実現益として扱われる(利益として課税される)ようになっていて、取引履歴をすべて収集しなければいけないことも大きな労力を強いられます。
沼澤
岡田氏
沼澤
当社は、投資家と税理士のマッチングに加え、税額を計算できる自動化ツールをご提供しているのですが、さまざまな形態やすべての取引所に対応できるツールを提供することは、取引形態の進化のスピードを考えるととても挑戦的な目標だと言えると思います。
岡田氏
ひとつ例を挙げれば、「ボロウィング」。FXでいうところの空売りのイメージに近いのですが、従来の税務処理では想定されない取引で、その計算も非常に複雑です。きわめて高度なテクニックが必要になります。
ですので、密な連携サービス、包括的な取り組みで一つひとつ課題をクリアしていくことが重要です。
−−課題に対するそれぞれの取り組みを教えてください。
岡田氏
2017年12月1日に国税庁より「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」が公表され、税務計算の方法が発表されました。しかし、実際の現場では、当該の内容だけでは処理できない取引が多々あり、困惑される税理士の先生も多かったです。そこで、迅速に情報収集を行い、さまざまな取引における指針を発表しました。内容は暫定的であったものの、会員だけでなく、さまざまな税理士の先生から「とても参考になった」と、うれしい評価を得ることができました。
他方で、投資家の方と仮想通貨交換事業者に向けた啓蒙にも注力しています。たとえば日々の取引履歴を、申告に必要なものだと認識している投資家の方は多くありません。各取引所についても取引履歴のフォーマットは一様ではなく、管理していない取引所もあるのが現状です。
「申告には何が必要になるのか?」 「どのような環境があれば投資家がスムーズに申告できるのか?」 など、今後も積極的に情報提供を行っていきます。
沼澤
また、サービス事業者として、投資家の方の声をダイレクトに聞ける立場であることから、投資家の意見を業界団体と積極的に共有し業界の発展に取り組んでいきます。
よりよい投資、税務環境の創出に向かって
−−投資家、税理士、サービス事業者、団体など業界全体が歩調を合わせた整備。それが仮想通貨投資のよりよい環境を生むのですね。
沼澤
そこで当社ができることとしては、“架け橋”になること、です。改正に向けてよりよい検討をしてもらえるよう、日々実際に行なわれている取引の実態を、事例としてJCTAはじめさまざまな業界団体にお伝えしていくことが必要だと考えています。また、改正以前に、現状では、どのように確定申告をすればよいのか、その認知が広く浸透しているとは言えません。
200万人以上の投資家がいると言われる一方で、申告を行いたくても方法がわからず未申告の方も少なくないと聞きます。当社がそういった方々の窓口になり、誰もが確定申告を行える土壌を築いていく。こちらも重要な目標の一つです。
−−最後に、投資家、税理士の方々にメッセージをお願いします。
岡田氏
また、当協会としても、皆さまが申告しやすい環境づくりに邁進しています。たとえば「課税を決済時、法定通貨交換時のみとする」「FX等と同様の申告分離課税にし、かつ損失を将来に繰り延べできるようにする」など、仮想通貨投資の発展に寄与し得る内容のロビー活動を実施中です。
ぜひ、投資と同様に仮想通貨の税についても興味をお持ちいただければ幸いです。
沼澤
仮想通貨取引の活況とともに、昨今では仮想通貨による資金調達「ICO」の浸透も急速に進み、今、急速に投資家が増えています。それゆえ、造詣が深い会計事務所のみに相談が集中してしまう状況にあります。「未知の分野であるリスク」「税法の整備が十分ではない」など、確かに仮想通貨ならではの難しい面もあるかもしれません。
しかし、仮想通貨投資の発展には皆さまのお力添えが欠かせません。ぜひ、JCTAの活動にもご参加いただき、また当社にもお力添えいただきたいと考えています。
JCTA(ジャクタ/一般社団法人 日本仮想通貨税務協会)
JCTAは、納税者及び税理士の方々への仮想通貨の税務処理に関する適切な理解の啓蒙を通して、納税者の方々の保護及び適正な納税慣行の普及を目指し、ひいては仮想通貨の更なる発展・普及を目的としています。
本年度については年始以降右肩下がりの相場が続いているため確定申告をする必要がないと考えている投資家の方は多いのですが、昨年仮想通貨の取得価格の計算方法として総平均法を採用している方を中心に、昨年以前の所得を本年度以降に繰越している方は、気づかずして確定申告が必要になっているケースも多くあります。
これに反して、税務については、すべての税理士が仮想通貨にまつわる知識を持っているわけではありません。それゆえ、投資家と税理士のマッチングを事業としている当社は、JCTAと協力し、税務環境の整備を進めています。